「規制」から「活用」へ
ここ数年、世界各国で大麻解禁の流れが強まっています。カナダが今年10月に医療用・嗜好用大麻を、ウルグアイに次いで世界で2番目に解禁したほか、実現すればアジア初となるタイや韓国での医療大麻解禁の動き、イギリスにおける限定的な医療大麻の合法化など、世界は大麻の合法化へと大きく舵を切っています。
医療用大麻って何?
このように、最近よく目にする「医療用大麻」というフレーズですが、そもそも医療用大麻って何なのでしょうか?
医療用大麻とは、その名の通り医療用途として治療のために大麻(カンナビス、とも呼ばれます)を使うことであり、植物としての大麻全体および、大麻を加工・抽出した製品全般を指します。タバコのように煙として吸うものも、加工してクッキーやブラウニーにして食べるものも、抽出してオイルとして摂取するものも、全て医療用大麻の仲間なんですね。
では嗜好用と何が違うかって?実は嗜好用と医療用に明確な境界線はありません。
これは、野生犬とペット犬の関係性に似ています。
野生もペットも犬は犬です。身体的特徴や本質的な性格は同じです。ですが、家で飼う犬は全てペットに、飼われていない犬は野生ということになります。
大麻が医療目的で使用される場合、それは品種や使い方に関わらず、医療大麻と呼ばれます。
ただし、犬にもペット用に特化した種がいるように、大麻の世界にも、化学成分を調整して「医療目的に特化した大麻」というものが出てきているのは確かです。
医療大麻は、オーストラリア・チリ・チェコ・イスラエル・カリフォルニア・コロラドなどアメリカの多くの州(連邦レベルでは未だ非合法)など、多くの国や地域で認められています。
大麻ってやばいんじゃないの??
日本では、大麻は覚醒剤やコカインなどと同じ「麻薬」として分類・管理されており、所持・栽培・使用は禁止されていて、重い刑罰が課されます。
「ダメ・ゼッタイ」というフレーズと共に、「頭がおかしくなるもの」「中毒性の高いもの」と理解されている方も多くいます。
しかし、大麻はタバコやアルコール、そしてカフェインよりも依存性・禁断性・耐性(※)が低く、多くの病気や疾患、そして健康維持に役立つものとして、現在世界的に医療目的で大麻の使用・活用が研究されています。
また、1972年のニクソン大統領を議長とするシーファ委員会では、マリファナが身体機能の障害を起こすこともなければ、暴力的・攻撃的行為の原因になる証拠もない、と結論づけており、酔って暴れる人も多いアルコールよりも、安全に使えるものとして認知されています。
今までの「大麻=薬物」という固定観念を見直し、科学的に見直す、という動きを背景に、世界的な大麻解禁の流れが生まれています。
※耐性とは、徐々に使用量が増加することを指します。
大麻にはどんな効果があるの??
大麻には大きくCBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒロドカンナビノール)という成分で構成されています。
THCには向精神作用があり、リラックスしたり、いわゆるハイになったりする効果があります(※)。
一方で、CBDには向精神作用がなく、免疫システムの調整や、抗酸化作用により健康に貢献することがわかっています。
※大麻の種類やブレンディングによって体への作用は大きく変わります。
医療用大麻で使われる成分(カンナビノイド)
どんな病気に効くの?
大麻研究は急速に発展を遂げている最中で、まだ明確に断言できるほどに結果が揃っていないのが実情ですが、今わかっているだけでも相当の効果が期待できそうだ、ということで世界的にも注目を集めています。
数多くの病気や疾患に効果があると期待されていますが、今回はその中から5つを厳選してお届けします。
不眠症
THCという成分には、睡眠を導入する効果があるとされています。
1973年にアメリカで行われた研究によると、20mgのTHCを摂取した患者は、睡眠に至るまでに時間を1時間以上短縮できたという結果が出ています。
また、2008年にドイツで行われた研究によると、THCの相当量摂取することにより、レム睡眠の時間を減らせるという結果が出ています。レム睡眠が減るということは、ノンレム睡眠が増え、深く眠る時間が長くなります。
ただし、レム睡眠も免疫機能などにとって重要なので、処方量には気をつけなければなりません。大麻も、一般の薬や食べ物と同じように、正しい用法と用量を守ってこそ効果が出るものです。
慢性疼痛(慢性的な体の痛み)
CMA(California Medical Association)によると、大麻は神経損傷や病気による神経障害性の慢性疼痛患者の痛みの緩和において著しい効能があったとし、治療に大きな効果があるとしています。
また、2016年のアメリカにおける調査は、医療用大麻の使用によってがんによる痛みを60%以上和らげることができた一方、ほとんど副作用が現れず、結果的に薬への依存が減ったと報告しています。
HIV/AIDS
大麻は、AIDSのHIV消耗性症候群、および免疫機能の補完に役立つことがわかっています。
HIV消耗性症候群とは、発熱や下痢が1ヶ月以上続き体重が10%以上減り慢性的な衰弱を伴うことを指し、エイズ患者にとっては5%以上の体重現象が生命危機につながるとも言われています。
大麻は、THCの食欲増進効果により、消耗性症候群への唯一の対抗手段として注目されています。
2000年にカリフォルニア州立大学で行われた研究では、6週間THCを摂取した患者には、HIVウイルスの増加が見られなかったことが報告されています。
大麻はAIDSの特効薬ではありませんが、実際の治療を受けている間、食欲を支え、ウイルスの増殖を防ぎ、痛みを和らげているものとして大きく期待されています。
がん
大麻のCBDはがん細胞に対して活性酸素を供給し、これによりがんを抑える効果があると期待されています。
スペインのサンチェス博士によると、THCとCBDを組み合わせることで、がん腫瘍を殺す大きな効果が得られるとの研究結果を発表しています。動物実験はすでに完了し、人体臨床の段階に入っています。
また、抗がん剤と異なり、他の細胞への副作用が少ないため、抗がん剤に変わる治療薬として注目されています。
てんかん
大麻のCBD成分はてんかんの発作を抑える薬として注目されており、特にアメリカでは、12年12月、米国でエピディオレックスを使用した初めての人間であるサム・ボーゲルスタインのエピソードとともに、てんかんへの効能が大きく世間に広まりました。
2018年6月、エピディオレックスは、連邦政府下にあるFDAが承認した初めての医療用大麻となった。米国連邦政府は、医療用大麻を2018年11月現在も認めていないが、その連邦政府でも認めざるを得ない効能が大麻にあるという証明となりました。
日本では買えるの??
現在日本では、大麻自体をを売り買い所持することはできません。しかし、医療用大麻の主成分である茎および種子由来のCBDを使ったCBDオイルなどの製品は購入することができます。
日本で可能なCBD商品は、こちらの記事を参考にしてください。
ざっくりまとめ
- 大麻には医療用・嗜好用にモノとしての本質的な区別はないが、効能を上げ、治療の効果を高めるために特化した種は存在する。
- すでに大麻は医療用として世界の多くの国で合法化され、医療現場で使われている。
- 多くの病気・疾患に効果があると期待されている。不眠症・慢性疼痛・HIV/AIDS・がん・てんかんについては、ある程度の研究結果が出ているが、研究は急速な発展と浄化にある。
- 大麻自体は日本ではまだ解禁がされておらず、研究や議論も進んでいない。大麻成分のCBDだけは解禁されている。CBD商品についてはこちらを参考に。
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